乳中に多く含まれるラクトフェリン(LF)は様々な生物活性を有する。筆者は以前にLFのin vivoにおけるマウスサイトメガロウイルス感染防御効果を認めた。その際の条件はLFの腹腔内接種という乳中LFの日常の摂取方法とは異なるものであった。 そこで、LFの経口投与によるマウスサイトメガロウイルス感染防御効果を検討した。まず、LFを経口投与するに当たり、消化酵素によるLFの抗ウイルス効果の失活の有無を確認するための実験を行った。タンパク質分解酵素であるトリプシン、ペプシン処理LFを2mg/g〜0.01mg/g濃度でウイルス感染前2日間、マウス腹腔内に接種し、マウスの生残率によってウイルス感染防御効果を検討した。その結果、未処理LFでは0.03mg/g以上、トリプシン処理LFにおいては0.13mg/g以上の濃度で感染防御効果が認められ、ペプシン処理においても0.5mg/g以上に効果が認められたことより、消化酵素によって、ウイルス効果が失活する可能性は低いものと判断し経口投与実験へと進めた。LFを飲水に混ぜた自由摂取方法で検討した。50mg/ml濃度、10mg/ml濃度LFを飲水として2週間摂取させ、致死量のウイルスを腹腔内接種し生残率を検討した結果、対照群の生残率は0%、10mg/ml濃度LF群は20%、50mg/m1濃度LF群は10%と飲水によるLF経口投与のマウスサイトメガロウイルス感染防御効果は認められなかった。飲水による方法は摂取量も不明のため、現在、胃ゾンデによる強制的な投与方法でLFの経口投与によるマウスサイトメガロウイルス感染防御効果を検討している。
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