経口投与によるラクトフェリン(LF)のマウスサイトメガロウイルス(MCMV)感染防御効果の20年度の結果では消化酵素によるLFの失活は認められないことは確認できたが、LF飲水添加の方法では経口投与による抗ウイルス効果は認められなかった。そこで、21年度は胃ゾンデによるLFの強制投与による抗ウイルス効果を検討した。1mg/g(マウス体重)を7日間胃ゾンデにて強制投与し、致死量のMCMVを腹腔内投与後、体重変化、生残率を調べた結果、体重減少はヒト、ウシLFともに対照群と比べ大差はなかった。最終生残率は対照群が20%に対し、ヒトLF群は33%、ウシLF群は9%であった。これらの結果から昨年度の飲水添加同様、強制投与によってもLFの経口投与による明らかなMCMV感染防御効果は認められなかった。この結果より、経口投与によってはLF腹腔投与のようなNK細胞活性上昇による強いMCMV感染防御効果は認められないものと判断した。これまでのMCMV感染経路は腹腔接種と強い感染を起こすものであったが、MCMVの自然感染経路には経口感染がある。そこで、MCMVの経口感染の際にLFの経口投与による防御効果の有無のヒントを得るためにin vitroによるLFのMCMV感染防御効果を検討した。LFの直接のMCMVへの抗ウイルス効果、感染細胞にLFを事前に作用させた場合の抗ウイルス効果、細胞にMCMVを感染後培養液中にLF添加した場合の抗ウイルス効果、感染細胞にLFを事前に作用させた後、MCMV感染させ培養液中にLF添加した場合の抗ウイルス効果を調べた結果、LFの直接的な抗ウイルス効果は認められず、感染細胞にLFを事前に作用させた後、MCMV感染させ培養液中にLF添加した場合が最も強い抗ウイルス効果を示した。条件によるが、in vitroによるLFのMCMV感染防御効果が認められた。
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