本研究は、第1次調査(面接法)、第2次調査(質問紙法)、それによるアセスメントツールの開発および実践普及(開発・試用検討・完成)の3部構成で計画している。平成21年度は、20年度の面接調査の続行と、育児困難状況と思われる事例を産褥4ヶ月以降も追跡調査を行った。それと並行して、面接内容の分析を行っていった。 面接調査は、不妊治療によって妊娠成立し、妊娠の安定した妊娠中期から、子どもを持った生活の安定する産褥4ヶ月までで、研究対象者1人あたり約8ヶ月間で計5回と、育児困難状況として11ヶ月間に渡った事例があった。研究協力者は、不妊治療の受療が負担となっている場合(不妊治療での妊娠を口外していない場合など)、合併症など母体の健康が不十分であることや多胎などハイリスクである場合などを除いた妊婦に医療施設側から研究を紹介・協力依頼した。研究の承諾を受けた5施設からの紹介を受けたが、研究協力者の申し出、母体の緊急入院、胎児・新生児の疾病・死亡等により対象から外れた事例があり、最終的には17名であった。面接調査回数による研究協力者の内訳は、2回4名、3-4回5名、5回まで終了したのは6名であり、それ以降に継続して面接した事例は2名であった。面接内容の分析作業によって、不妊治療後の産褥期における母親の育児は、子どもへの愛着は充分あるものの、「不妊治療後妊娠」「特別な子ども」「育児に有用な情報のみ取り入れる」といった自ら閉鎖的な環境をつくり、「夫・実母の協力」によって疲労感・負担感が左右していた。これは、不妊治療後妊婦は、治療に取り組んできた段階からの離別のしにくさ、一般の妊婦と同様な支援によって経過することの違和感がネガチィブに働きやすい不安定な精神状態であることを示している。これらを視野に入れた育児支援体制が必要であることを確認し、アセスメントツールの開発・普及の重要性を確認した。
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