【目的】保健師現任教育のプログラム作成の基盤として、精神障害者を対象とした保健師の家庭訪問に必要なスキルの認識、現状、習得方法を明確にすることを研究目的とした。 【方法】全国436保健所(支所含む)の精神保健福祉担当保健師を対象に、自記式アンケートを実施した。調査内容は基本属性と、家庭訪問に必要なスキル39項目を重要性4件法と習得状況4件法、習得方法を設定して問うた。スキル項目は0から3点の評定尺度として分析した。調査期間は2010年1月~2月である。山口大学大学院研究倫理審査委員会の承認を得た。 【結果・考察】有効回答は474人、平均年齢42.9歳、保健師経験年数は平均18.8年、精神保健福祉業務経験年数は平均9.7年であった。家庭訪問件数平均43.4件/年であって、後輩育成の立場にある保健師は55.1%であった。スキルの重要度平均得点は2.6で、得点の高い項目は「制度サービスの把握」「疾患の特徴を知る」「危機的状況を予測した対応」等であった。また平均よりも低い項目は「気持ちを伝える」「民生委員・医療機関等のリスト作成」「ゆとりを持った訪問」等であった。スキルの現状得点は平均は2.0(±0.54)であった。高い項目は「共感、意向を尊重する」「対象者と家族のニーズ」等であった。低い項目は「サービスリストの作成」「危機的状況への対応」等であった。習得方法は「対象者の関わり」48.2%、「保健師からの助言」21.6%が主であった。家庭訪問を体験し、精神障害者と関わることが現任教育となっていることが示唆された。スキルの重要性と習得状況の差が大きいのは「危機的状況への対応」の0.98であった。吉永や、平野らの報告のように危機的状況に関するスキルは喫緊の課題であり、その習得方法が「保健師の助言」が多いことを勘案すると、保健師による伝承を現任教育として実施することが重要である。
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