精神保健福祉施策制度の変遷により、市町村保健師が精神障害者を家庭訪問する機会が増加しているが困難感を伴っていることを背景に、家庭訪問スキルとその評価尺度を開発し、市町村保健師の現任教育における実用化を研究目的とした。調査対象は、都道府県保健所(支所を含む)436か所の精神保健福祉担当保健師を対象とした。調査方法は、郵送による無記名自記式調査とし、返信用封筒を同封して郵送による回答を依頼した。調査紙は、基本属性と、家庭訪問スキル39項目の重要性の認識と習得状況及び習得方法について問う質問で構成した。評価尺度は因子分析により導出した。 1)全スキルとも、重要性を認めるものの習得出来ていないと認識されていた。 2)年齢・保健師経験・精神保健経験年数は上がるにつれ、習得状況は上がり、できなさ感は下がる傾向であった。 3)精神保健経験5年までに習得状況が急激に上がる。スキル習得には5年の精神保健実務経験が必要である。精神保健経験1年未満は隔たりが大きく、特に「危機的状況の対応」「サービスの情報提供」「訪問するタイミングの見極め」は顕著で、効果的な習得が課題である。 4)「危機的状況を予測した対応」「関係者が情報共有」は重要であるが、習得困難なスキルである。今後、有効な習得方法の解明が課題である。 5)有効な習得方法は「対象者との関わり」とされたが、「危機的状況を予測した対応」「出会える工夫」「関係者が情報の共有」等のスキルは「先輩からの助言」で習得される伝承のスキルであった。 6)「精神障害者を対象とした家庭訪問スキル」の尺度は「ニーズを見極めるスキル」「対象者の持つ力を判断するスキル」「家庭訪問管理スキル」「対象者との関係性構築スキル」「病気に関連した支援スキル」「情報提供スキル」で構成された。
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