本研究の目的は、一定地域において1歳から3歳にかけて前向きに養育者の育児状況、健康状態、育児サービスの認知・利用状況の調査を通じて必要とされる支援の仕組みや内容を分析するとともに、分析結果を踏まえ成長過程に応じた介入として携帯電話等を用いた情報提供と個別相談の効果的な活用方法を探ることである。20年度は、研究倫理審査の承認を得た上で、研究対象である介入群、対照群の選定とデータ連結のためのコード化、1歳6か月児養育者の調査票の作成と調査の実施、情報提供用のホームページの開設と情報の集約、介入群への情報提供を実施した。介入効果を評価する項目として虐待行動尺度、社会的健康度尺度、養育者の情報収集行動やサービスの認知・利用状況を選定した。既存の尺度では養育者の社会的健康度にっいて充分測定できる尺度がなかったため、母親の社会的健康度について今回、新しく尺度開発を行った。その結果、社会的健康度には「社交性」「子育ての負担感」「地域社会との関わり」「自己コントロール」の4つの因子構造が明らかになり、クロンバックのα係数はすべて0.7以上の値が得られ、尺度の信頼性が認められた。また尺度の妥当性では母性意識尺度との相関係数を求めたところ、肯定的意識得点とは有意な正の相関、否定的意識得点とは有意な負の相関がある等、ある程度の関連が認められた。今回開発した社会的健康度尺度を用いて、社会との関わりを促進するための介入方法を実証的に分析することで、育児不安や虐待発生の予防のみならず、家族のヘルスプロモーションに向けた関わりの手がかりが得られると考えられる。実際、1歳6か月の時点では、保育園の園庭開放や子育てサロン等の利用経験は10-15%にとどまっており、携帯電話を利用した身近な情報提供により介入の効果が分析でき、効果的な親支援施策の基礎資料となると考えられる。
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