本研究の目的は、一定地域において1歳から3歳にかけて前向きに養育者の育児状況、健康状態、育児サービスの認知・利用状況の調査を通じて必要とされる支援の仕組みや内容を分析するとともに分析結果を踏まえ成長過程に応じた介入として携帯電話等を用いた情報提供と個別相談の効果的な活用方法を探ることである。21年度は20年度に構築した情報提供システムを用いて、介入群(介入当初391名)への情報提供として、3回の紙媒体「ハッピー子育て新聞」の作成と発送、5回携帯電話等へのメールの送信、身近な子育て情報を集約したホームページの作成と管理運営を行った。アンケート調査から養育者の特徴として、出生順位別にパートナーとの協力状況や潜在的虐待傾向に差異がみられ、出生順位が上がるほどパートナーとの協力状況が低下するの層が認められ、養育態度における潜在的虐待も有意に高くなっていた。また養育者の年齢や出生順位により、必要としている情報内容と情報収集手段の差異が明らかになり、各層の特徴や多様なニーズに対応できるように情報のナビゲーション機能を強化することの必要性が示唆され。20年度に新しく開発した母親の社会的健康度尺度の結果も含めて、3編の学会発表を実施し、2編の学術論文の投稿を行った。本研究では、社会的健康度尺度を用いて、社会との関わりを促進するための介入方法を実証的に分析することで、育児不安や虐待発生の予防のみならず、家族のヘルスプロモーションに向けた関わりの手がかりが得られると考えられる。1歳6か月の時点では、保育園の園庭開放や子育てサロン等の利用経験は10-15%にとどまっており、携帯電話を利用した身近な情報提供により介入の効果が期待でき、効果的な親支援施策の基礎資料となると考えられる。
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