平成20年度は、一人暮らし高齢者の社会的な孤立のリスクをスクリーニングできる項目を明らかにすることを目的として、文献検討により社会的孤立を予防するための一つの観点として、ソーシャルネットワークについて整理した。 文献検討では、ロジャースの概念分析の過程にそって、地域に居住する高齢者のソーシャルネットワークの概念について分析した。文献のデータベースとして、看護学はCINAHL、公衆衛生学はPubmed、心理学はPsycINFO、社会科学はScopusを使用した。収集期間は、1999年から2008年の10年間として、論文のタイトルでは「social network」、キーワードとしては「older adults or elderly」を設定して検索した。その結果、看護学34件、公衆衛生学49件、心理学38件、社会学86件が検索され、そのうち重複した文献を除き、合計126件の文献が得られた。126件の20%の件数として、無作為に26件を抽出した。さらに分析の過程で書籍と理論構築に関する論文4件を追加し30件を分析対象とした。属性は、「相互につながる線」「強弱のあるつながり」「肯定的・否定的側面を含む対人関係」「接触の頻度と密度」が抽出された。先行因子は、人、状況、場の3つの条件に整理された。帰結については、「家族介護者の生活の質が向上する」「日常生活の抑うつや痛みが減少する」「認知機能の低下を緩やかにする」「貧困による問題解決を可能にする」が抽出された。これらのことから、ソーシャルネットワークの概念は、高齢者の生活を支え、社会的孤立を予防するための一つの方法として有用であることが明らかとなった。
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