研究目的は、地域に居住する70歳以上の高齢者を対象として、家族構成別の要介護・要支援認定(以下、要介護認定)発生状況を明らかにすることとした。調査対象は、A県B村在住の70歳以上高齢者1523人中、要介護・要支援認定者、入院中の者を除く1347人とし、高齢者健康診査時に、事前郵送した質問紙に基づく聞きとり調査を行い、5~6年後の新規の要介護認定の発生をエンドポイントとした。初回調査の項目は、要介護の原因とされる生活機能の低下を評価する基本チェックリストの項目を参考に、基本属性、日常生活自立度(IADL)、社会的役割、運動器の機能(階段昇降、椅子からの立ち上がり、30分以上歩行)、過去1年間の転倒経験、咀嚼能力、食品摂取多様性、外出頻度、もの忘れ、抑うつ状態とした。新規認定者は262人(20.3%)、死亡は136人(10.5%)、転出者は12人(0.9%)であった(平均観察期間1786.9日)。高齢者の家族構成を、三世代で同居798人(61.9%)、その他の家族と同居307人(23.8%)、夫婦のみで同居131人(10.2%)、一人暮らし54人(4.2%)の4群に分類し、初回調査時の日常生活自立度(自立・非自立)を共変量として調整したCox回帰分析を行った。統計的な有意差があった項目は、夫婦のみ世帯高齢者では、バスや電車で外出不可、日用品の買い物不可、預貯金の出し入れ不可、友人の家を訪問(なし)、家族や友人の相談にのる(なし)、階段昇降不可、過去1年間の転倒経験ありの7変数であった。一人暮らし高齢者では、預貯金の出し入れ不可、過去1年間の転倒経験あり、抑うつ傾向ありの3変数であった。高齢者の家族構成によって、要介護認定発生に影響する要因が異なっていた。高齢者の家族構成は、単身世帯の増加など家族成員数が減少し多様化しつつあるため、家族構成に着目した介護予防の視点が重要である。
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