今年度は子育て支援プログラム開発のための環境整備および対象者の把握を中心に実施した。調査フィールドとしたA市において、現在実施中の子育て支援事業評価および新たな子育て支援プログラムの必要性について検討する研究チームを設立した。まず、A市で実施されている子育てに不安を持つ対象者向けの教室に1年を通して研究者が参加し、事業内容および参加者について詳細に把握した。参加者はおおむね教室には満足しており、グループプログラムによって、また同じ立場の参加者との交流を通じてエンパワメントされ、子育てに対してより肯定的に、前向きに捉えることができるようになっていたと感じられた。しかし、これらについては参加者の感想にとどまっており、効果として事業評価がきちんとできていないことが問題として浮上した。そこで、効果を評価するために育児ストレングス尺度(養育肯定感尺度改め)の活用可能性について検討した結果、次年度の参加者に対して育児ストレングス尺度を用いた評価を実施することになった。また、研究チームとA市における子育て支援事業の現状の問題点および新たな事業の必要性について協議を重ねた。さらにメンバーの資質の向上の目的で、実際に子育て支援事業をコーディネートしている専門家を招いて子育て支援事業に関する研修会を実施した。 次年度は、育児ストレングス尺度をより洗練させ、育児ストレングスと促進・阻害する要因について探索する目的で、大規模な調査を実施する予定である。この調査結果については新たな子育て支援プログラムの検討に反映させていく予定である。
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