養育肯定感尺度(Positive Affection of Child-realing Scale : PACS)の活用可能性の検討のため、A市で行われている子育て支援プログラムの効果測定を行った。プログラム参加者13名に対し前年度同様、調査の趣旨と匿名性の確保を口頭で説明した後、了承が得られた人を対象とし、プログラム実施前後にPACSを組み込んだアンケートを実施した。分析対象者は13名、有効回答数は100%であった。また対照群として、B市育児サロンに参加している母親にPACSを組み込んだアンケート調査を実施し、プログラム参加者との結果を比較した。62名の育児サロン参加者に調査票を配布し、調査の趣旨と匿名性の確保などについて十分説明を行った後、回答を持って了承を得たとみなした。育児サロン参加者には3ヵ月後(プログラムの実施期間に相当)に再度アンケートを実施し前後比較も行った。サロン参加者で2回とも回答が得られた対象は27名、回答不十分の2名を除外した2名を対照群とした(有効回収率40.3%)。最後にプログラム参加者と対照群のPACSのを比較した。なおプログラム参加者は少数であったため、前年度参加者に今年度の参加者を加えた26名を分析対象とした。プログラム参加者13名の平均年齢は36±3.8歳、平均子ども数は1.6人であった。すべて専業主婦、92%が核家族であった。PACSの平均総得点はプログラム前52.2±8.0、後は60.9±5.5であり、対応あるt検定において有意な差が認められた。また、4つの下位尺度のうち「親役割における満足」、「自己の成長」、「家族関係の強化」についてもプログラム前後で有意な差が認められた。最後に対照群とプログラム参加者とのPACSの比較を行った。属性に有意差は見られなかった。プログラム実施前はプログラム参加群のPACS総得点および下位尺度得点すべてが有意に低く、プログラム終了後にはプログラム参加者の得点が上昇し、両者に差は見られなくなった。また、対照群の前後2回のPACS得点はほぼ同じで有意差はみられなかった。以上から、この育児プログラムは効果があった、評価ツールとしてPACSは活用可能、尺度の信頼性についてが確認できたと考える。
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