研究概要 |
本研究の目的は要介護(支援)高齢者の健康状態について追跡を行い、その変化とサービス利用との関連を明らかにすることである。対象は2003年4月から2004年12月までの間に要介護(支援)認定を受けた65歳以上高齢者2341人についてベースライン登録を行い、追跡した(平均追跡期間5.7年)。得られた結果は次のとおりである。 1 要介護(支援)高齢者の要介護度、寝たきり度および認知症度と死亡の関連. 対象者の転帰は生存が976人(41.6%),死亡1,312人(56.0%),転出53人(2.2%)であった。年齢と8つの疾患を調整変数とし要介護度,寝たきり度,認知症度を強制投入して,多変量解析を行ったところ,要介護度については男性では有意な関連は見られなかったが、女性では要支援に対して要介護2-5で有意に死亡と関連し,要介護2のハザード比は1.50(95%Cl 1.05-2.15),要介護3のハザード比は2.37(95%Cl 1.63-3.47)要介護4のハザード比は1.74(95%Cl 1.12-2.71),要介護5のハザード比は2.57(95%Cl 1.52-4.36)となっていた。男性の寝たきり度は自立に対して,ランクCのハザード比は4.01倍と高く.女性ではランクBのハザード比が2.71倍,ランクCで3.79倍と要介護度別ランクよりも高い倍率で死亡と有意に関連していた。一方,認知症度については男女とも,いずれのランクにおいても死亡リスクに有意な差がみられなかった。 2 要介護高齢者の住宅改修サービス利用とその効果 住宅改修サービス利用有は男性137人(21.4%),女性は200人(16.8%)で有意に男性の利用が多かった(p=0.028)。利用有の平均年齢は男性81.31(SD8.07)歳,女性81.21(SD7.39)歳で差はなかった。年齢・介護度・疾患(がん,心疾患,脳血管疾患,呼吸器疾患,糖尿病,高血圧性疾患,筋骨格系および結合組織の疾患,損傷),および福祉用具貸与・購入,住宅改修サービスを一括投入したところ,男性のハザード比は0.73(Cl0.56-0.93)と有意に低く,女性は0.78(Cl0.61-1.00)と低かったことから、住宅改改修サービスを利用することが何らかのきっかけで、要介護度の進行を遅らせていることに関連しているのかもしれない。
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