1. 研究成果の具体的内容 1) 調査対象:千葉県内2市において、5名の保健師による生活習慣病予防の個別保健指導を参加観察した。5名とも特定保健指導のみを担当する部署に配属され、母子保健や介護予防等の地区活動は担当していなかった。 2) 分析方法と対象事例の選定:保健指導後2週間から6ヶ月後に生活習慣もしくは体重・腹囲に改善が見られた事例について、保健指導で保健師が意図した事柄、文化を考慮した保健指導方法を質的帰納的に分析した。また、調査対象保健師5名へ行動変容に成功した事例について保健指導で考慮した地域の文化の把握方法・内容及び指導の留意点を聞き取った。 3) 分析結果: (1) 地域の文化の把握方法:地区活動で把握してきた情報を想起する、指導対象者の話から把握する、指導対象者宅へ訪問する際に観察したり地域の住民の話を聞く、通勤途上や休日に保健師自身が商店を利用して観察したり話を聞く。 (2) 地域の文化の内容:交通・住環境・治安に合わせた生活、商業・漁業・農業地区毎に共通する生活時間・食生活・価値観、年代や職業に共通する家庭や地域とのつながり、等 (3) 地域の文化を考慮した保健指導方法 ・ 会社員・商業・農業・漁業等、本人や家族の職業に共通する生活を問いかけて現状を把握する。 ・ 本人や家族の職業や年代に共通する生活の目標を問いかけて健康管理との優先度を把握する。 ・ 本人と家族の生活の目標に結び付けて健康管理を勧める。 ・ 職業や年代に共通する生活状況に変更が少ない方法を検討する。 ・ 交通・住環境・治安に合わせて安全な運動方法を検討する。 2. 意義・重要性 都市部の保健師は、ハイリスク者を対象とした個別の特定保健指導のみを担当する部署に配属されていたため、従来の保健師活動のように地域に出向くことは少なくなり地域全体を把握することが困難になっていた。そのため、特定保健指導を担当する部署に配属される以前に保健部門で地区活動をしていたころに把握した地域の文化を想起したり、対象者から直接聞きだすこと等が、対象者の生活を把握したり実行可能な方法を検討することに有効だった。保健部門等のポピュレーションアプローチも担当する部署と連携し、相互に地域の文化を共有する場を設けることでハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチが有機的に連携し効果的な予防活動を推進できると考える。
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