本研究の目的は、介護老人保健施設の看護・介護職を対象にして、要介護高齢者に対する排便ケアの質の向上を目指した「排便管理リーダー育成プログラム」を組織的なアクションリサーチにより開発することである。平成20年度は、4月に介護老人保健施設の入所者、スタッフのベースライン調査、4月から9月に「排便管理リーダー養成研修会」、9月に養成研修会後の評価のため、入所者、スタッフの実態調査を行った。9月から平成21年3月は、施設の排便ケアの質の向上を目指し、排便管理リーダーと研究者が協働した介入を2つの施設に行い、1つの非介入施設を対象施設とし、3月に評価のための実態調査を行った。 ベースライン調査の目的は、介護老人保健施設の入所者の便の性状の実態と便の性状を明らかにすることである。対象とした施設の入所者は192人、スタッフ数は42人だった。調査期間は、4月から5月の1ヶ月間で、毎日の排便状態と排便ケア状況を調査した。便の性状はブリストルスケールを用いた。その結果、対象者192人の平均年齢は87.4歳で女性が148人(77%)だった。認知症状のある人は174人(94%)だった。便意のない人は52人(27%)、腸蠕動がない人は55人(29%)だった。便の性状は、軟便が49人(26%)、普通便が122人(64%)、硬便が21人(11%)だった。下剤を使用していた人は121人(63%)で、緩下剤の使用が51人(42%)、刺激性下剤の使用が35人(29%)、両方を使用していた人は35人(29%)だった。今後便の性状に関連する要因を明らかにしていく。 「排便管理リーダー育成プログラム」は、3つの施設から選ばれた看護職6名、介護職6名が参加し自己効力感の向上がみられた。今後プログラムの効果を評価していく。
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