20年度後期に地域高齢者296名を対象に行った地域版二重課題歩行の測定結果を分析した。「地域版二重課題歩行」は三種の副課題(課題無し、二桁の数字の逆唱、三桁または四桁の数字の逆唱)を行いながら、主課題として2.5mのセンサーシート(アニマ社製Walk way)を含む直線5mの距離をそれぞれ3回歩いた。この他、同副課題を行いながら主課題として立位の保持(重心動揺計にて測定)、30秒片脚立位保持時時間、認知症スクリーニング検査日本語版(RDST-J)、短縮版ストループテスト、生活機能、視聴覚障害の有無等を測定した。所属機関の倫理審査・承認を得て、また対象者に研究主旨の説明及び同意を得て実施した。なお、当初は四桁の数字の逆唱を地域版二重課題の副課題としたが、難しすぎたため三桁に修正した。結果、参加者は75.5±6.0歳であった。地域版二重課題歩行の測定値のうち左右の重複歩距離・歩幅・歩行速度・ケイデンスは、課題無し・二桁逆唱・三桁逆唱の副課題の順に低下し、左歩幅の変動係数は増加する傾向にあった。片脚立位保持時が30秒完遂者を姿勢安定群、それ以外を姿勢不安定群とした2群で、二桁と三桁逆唱時の重複歩距離・歩幅・歩行速度・歩幅の変動係数の差を認めた。75歳を元に年齢群別に解析しても同じ傾向であった。視覚低下の有無で分けた2群では、一歩幅の変動係数のみ差を認めた。聴覚低下の有無で分けた2群では、一歩幅、ケイデンス、一歩幅の変動係数の差を認めた。転倒の既往の有無では歩行指標の差を認めなかった。RDST-Jの7点以下と8点以上の2群では、通常歩行速度・二重課題条件下の歩行速度に差を認めた。しかし通常重心動揺軌跡長・二重課題条件下重心動揺軌跡長は2群間で有意な違いはみられなかった。現在、21年度後期に同対象に実施した過去1年間の転倒発生に関する聞き取り調査の結果を入力、解析中である。
|