本研究の目的は、おおむね自立した生活を送っている地域在住高齢者を対象とする、認知課題に対応しながら歩行する能力を評価する方法の一つとして、二重課題歩行指標を開発し普及することであった。 地域版二重課題歩行は、センサーマット2.4mを含む計5mを自由速度で歩行し、その際、認知課題なし、無作為な2連の数字の逆唱という認知課題を強制した歩行、3連の数字の逆唱を強制した歩行をそれぞれ3回行う。平成22年度までに、長野県内の地域在住高齢者208名を対象に、地域版二重課題歩行を試行した。その結果から、地域版二重課題歩行は基準尺度と中等度から強い相関が見られたが、調査後1年間の転倒との関連は認められず、予測妥当性に乏しいという課題が残された。また、本年度は地域版二重課題歩行の録画記録を振り返り、目視による歩容の観察を試みたが、看護職には目視で歩容の変化、とりわけケイデンスのばらつきに気づくことが困難であるとわかった。本研究で基準指標とするために使用したアニマ社のWalkWayは軽量で公民館への持ち込みが可能であったことから、このような測定機器を使うことを前提とした指標の開発を今後考えていくこととした。 地域版二重課題歩行は地域で普及する指標としては解決すべき課題が残されているが、二重課題歩行や注意配分という考え方については転倒予防に重要であるため、普及啓発活動をすすめた。市町村の一般住民向けの健康関連イベント、医療・保健・介護系職種の各種研修会、転倒予防指導者の研修会等の機会を利用して啓発活動を行った。また、介護予防事業(一次予防、二次予防)で注意配分の要素を取り入れた運動指導を行った。
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