昨年に引き続き、アルコール依存症者の家族のターニングポイント、及びターニングポイントをきっかけとして起こる帰結についての分析を共同研究者とともに行った。アルコール依存症者の家族のターニングポイントは【喪失による脅かし】、【はりつめた心の瓦解】など5つのカテゴリと帰結として【行動の変容】、【態度の変容】など4つのカテゴリを得ている。分析を通じて、家族の行動変容のプロセスが明らかになり、介入の指標を見いだしている。さらに本年度はこれらの分析結果と類似疾患の家族の行動変容についての先行知見の収集・分析や行動変容に関する理論の整理を行い、比較検討した。アルコール依存症家族の経験についての2005年以降の国内研究を再度収集し、今回の結果と比較検討した。また、教育プログラムの作成を行うに当たって、これまでのアルコール依存症者の家族に対する教育支援プログラムや慢性疾患など類似する疾患の特徴を踏まえたうえでの教育プログラムの先行知見の収集と分析した。これまでのアルコール依存症者の家族への教育プログラムの分析では、家族がアルコール依存症者の断酒の協力者としての教育プログラムの作成が行われており、本結果からは、家族の回復に向けて異なる視点でのプログラムの作成が必要であること、また初期介入として、行われている教育プログラムの内容の再検討の必要であることが明らかになった。これらの分析結果を踏まえて教育プログラムの構成要素を決定し、教育プログラムの提案を行う予定である。
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