排泄行動に障害が認められる施設高齢者を対象に排泄行動能力や排泄障害に応じた援助プログラムを作成・実施し、その効果を検証することを目的に研究を行っている。今年度は、意思疎通はできるにも関わらず、尿意の知覚と伝達能力が低下しており尿意の訴えがないため、定期的にトイレでの排泄を試みているが常に尿失禁がみられる入所者を対象に、援助プログラムを実施した。プログラム実施前に1日の排尿回数、1回排尿量、および残尿率を調べ、膀胱機能を評価し、膀胱機機能が著しく低下している対象者は除外した。そして、2〜3時間の間隔でトイレへの誘導を行い、誘導の際には必ず尿意の有無を確認し、対象者に尿意の有無に関する訴えがあればそれに応じてトイレへの誘導を行った。9名の対象者に4週間の援助プログラムを実施した結果、尿失禁率は、実施前61.9%、実施後25.0%で有意(p<0.05)に低下した。確実に尿意を訴えた回数は、1日あたり実施前0〜1回で、実施後は3回となり、確実な尿意を訴えた回数は有意(p<0.05)に増加した。自発的な尿意が認められ、高齢者自身の訴えに応じたトイレ誘導が可能になった者が2名、援助者の意図的な尿意の確認は必要であるが、確認すれば確実に尿意の有無を訴えることができた者が5名おり、対象者9名中7名が定時誘導から個々の排尿間隔に応じた排尿援助に変更することができた。 以上のことから、尿意を訴えない高齢者に対しても尿意を確認し、尿意に対して意識を向けるとともに、訴える機会を確実に提供すること、そして、訴えがあった揚合はその訴えを尊重し高齢者自身のコントロール感を高めることで、尿意を訴えるという能力を再獲得することができる可能性が示唆された。
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