高齢者施設で排泄行動に援助を必要とし、排泄障害を有する高齢者を対象に、排泄障害の種類とその原因について分析を行った。調査内容は、排尿状態(1回排尿量、残尿量、尿失禁の有無、1回失禁量、総排尿量)、膀胱機能、そして排尿行動として、尿意の訴えと排尿動作について調べた。さらに、援助方法として、随時誘導、定時誘導かについて調査した。 対象者35名のデータを分析した。尿失禁に関しては、失禁率が50%を超える者(高い者)が16名(45.7%)で、低い者が19名(54.3%)であった。失禁率が高い者と低い者の2群で、膀胱機能と排尿行動との関係を分析した結果、失禁率は膀胱機能とは関係が認められず、尿意の訴えと有意(P<0.01)な関係が認められ、尿意の訴えがない者に失禁率が高い者が多かった。さらに、尿意を訴えない者は、すべての対象者が定時誘導を受けており、高齢者自身の尿意の訴えに依存した排尿援助が実施されていることが明らかになった。 残尿の結果を、残尿率30%未満、残尿量50mlを「正常」として分類すると、残尿が常に正常である者は4名(11.4%)と少なく、常に残尿量の異常が確認できた者は11名(31.4%)であった。これらの対象者には、施設職員を通じて泌尿器科受診を勧めた。受診の結果、定期的な導尿や内服薬の処方が行われ、症状が改善した者では活動性の向上など生活行動の変化が認められた。常にではないが、残尿が観察される対象者は、20名(57.1%)と高率であり、どのような状況で残尿が多くなるのか検討することが課題である。1日の排尿回数が8回以上を頻尿とすると、頻尿の者が12名(34.3%)であった。また、総排尿量に対する夜間排尿量が35%以上を夜間多尿とすると、夜間多尿でない者は1名であり、夜間に50%以上の排尿が認められる者も23名(65.8%)と高率であった。 以上の排尿障害の原因、関連などについてさらに分析する必要がある。
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