排泄障害が認められる施設高齢者を対象に排泄行動能力や排泄障害に応じた援助プログラムを作成・実施し、その効果を検証することを目的に研究を行っている。今年度は、便失禁が認められる対象への援助を実施した。対象者は、1日1回~数回、泥状~水様便の便失禁が認められた。対象者はいずれもトイレ動作は自立しているか介助により可能であったためトイレでの排泄行動は行っていたが、便意の訴えがない者が3名、便意でトイレに行っても間に合わず失禁している者2名であった。対象者自身が便意を感じている場合でも間に合わないことから、便の形状が水様であることが失禁の主な原因であると考えられた。すべての対象者が緩下剤(カマグ)を内服しており、さらに、刺激性下剤を併用している者もいたため、個々の対象者の内服量に応じて、下剤の減量を試みた。5名中4名が3週間くらいで有形便を排出できるようになり、便失禁が消失した。便意がなかった3名のうち有形便が排出されるようになってから、便意を訴えることができるようになった者が1名、あとの2名はスタッフによる誘導でトイレに行った際に排便ができるようになった。排便間隔は、対象者によってまちまちであり、本来の排便周期で排泄できていることが推察された。失禁が完全になくならなかった1名は、下剤を減量しても便の性状は変化しなかったが、朝食後すぐにトイレ誘導することで、失禁の回数は減少した。 便失禁が認められる施設高齢者は、トイレで排泄する動作自体は援助されていたが、便意が不明であったり、あっても間に合わなかったりすることによってトイレでの排泄が困難になっており、そのことは、下剤の内服によって便が水様化することによって生じていることが推察された。したがって、便の形状が軟化し便失禁している施設高齢者には、有形便の排出を目標に下剤の内服量を減量し、本来の排便周期での排便を援助する必要性が示唆された。
|