研究課題/領域番号 |
20592662
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
末弘 理惠 大分大学, 医学部, 助教 (30336284)
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研究分担者 |
三重野 英子 大分大学, 医学部, 教授 (60209723)
甲斐 博美 大分大学, 医学部, 助教 (80443894)
浜口 和之 大分大学, 医学部, 教授 (60180931)
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キーワード | 耳のケア / 要介護高齢者 / 耳垢除去 / 耳垢蓄積 / 聴力 |
研究概要 |
[目的]要介護高齢者における耳のケア(耳垢除去)の効果の検証を目的として、12週間の耳のケアの介入を行い、(1)聴力の変化および(2)耳垢の蓄積経過と性状との関係を明らかにした。 [方法]対象は、施設入所中の要介護高齢者のうち、外耳道の異常、退所、MMSE21点未満および聴力検査不可を除外した10名19耳である。耳垢除去の基準・調査方法として、初回観察・介入は、外耳道は耳鏡を用いて観察した。耳垢の性状は‘湿型’と‘乾型’2種類に、蓄積状態は‘完全閉鎖’ ‘1/2閉鎖’ ‘1/3閉鎖’ ‘閉鎖なし’の4段階で判定した。その後、‘完全閉鎖’‘1/2閉鎖’‘1/3閉鎖’の耳に対して、ベビーオイルを塗布した小児用綿棒で軟骨部外耳道に付着した耳垢を拭き取った。12週間の観察・介入は、2週毎に外耳道の観察を行い、‘完全閉鎖’ ‘1/2閉鎖’の耳に対して耳垢除去を行った。聴力検査は、耳垢除去前後にオージオメーターにて0.5kHz、1kHz、2kHzの気導・骨導聴力を測定し、平均聴力(四分法)と気骨導差を算出した。 [結果]初回観察時、耳垢により1/2閉鎖もしくは完全閉鎖の外耳道は7耳36.8%であった。これらの7耳は、12週後において、‘1/2閉鎖’ ‘1/3閉鎖’ 各1耳、‘閉鎖なし’ 5耳となった。耳垢除去前後に聴力検査を行った10耳のうち、「完全閉鎖→完全閉鎖」1耳を除外した9耳において、除去前に比べて除去後の閾値が有意に低下し聴力改善が示された(気導聴力:前35.4dB>後32.8dB P=0.043、気骨導差:前5.8dB>後2.8dB、P=0.002、t検定)。湿型耳垢(8耳)は乾型耳垢(11耳)より、‘1/2閉鎖’と‘完全閉鎖’の耳垢蓄積の割合が有意に高く、耳垢の蓄積期間は「閉鎖なし→1/3閉鎖・1/2閉鎖」が約8週であり、性状の差はみられなかった。 [考察]耳垢除去の効果として、聴力改善が示唆された。耳垢除去の目安は約8週間であることが示され、この結果を目安にした予防的な耳垢除去は、聴力の維持・改善につながると考えられる。
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