研究概要 |
訪問看護で優先的に実施すべき標準予防策(以下、SP)を明らかにするため、感染に関するインシデント・アクシデント(以下、有害事象)とSP遵守について、全国の訪問看護事業所を対象に質問紙調査を実施した。対象は、介護サービス情報の公表で、感染症に関する事故事例の検討記録があると公表している1,345事業所の中から、電話で了解が得られた305事業所とした。質問紙はスタッフと管理者に配布し、スタッフは1事業所3名で、針刺しや感染事例に関わった者を優先的に選定するよう管理者に依頼した。結果、有効回答数は197事業所(64.6%)で、管理者194名(63.6%)、スタッフ517名(56.5%)だった。訪問看護中に感染に関する有害事象の経験が"ある"スタッフは68名(13.2%)で、"どちらとも言えない",15名(2.9%)、"ない"413名(79.9%)、無回答21名(4.1%)だった。有害事象の内容は多い順で、針刺し39名、疥癬14名、結核10名、ノロウイルス9名他で、傷害の程度は"身体上の被害はなかった"59名、"治療は1週間以内"17名、"治療は1週間以上"12名だった。有害事象に遭遇した原因として、"感染症を把握していなかった"、"手袋やガウンによる防護が不適切であった"、"利用者の咳やくしゃみなどを浴びた"等が挙げられ、針刺しの原因には"採血時に手袋をしていなかった"、"リキャップ禁を知らなかった"、"廃棄容器が耐貫性でなかった"等があった。スタッフ517名のSPの実施については、「その場面ではいつも実施している」で最も低かったのが"採血前の手袋着用"(72名,13,9%)で、"利用者に呼吸器症状があった時にはマスク着用"も確実には実施されていなかった(266名,51.5%)。訪問看護で優先的に実施すべきSPを検討する上で、今回の有害事象とSP実施状況の結果は大きな意義がある。
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