全国の訪問看護事業所を対象に実施した、感染に関するインシデント・アクシデント調査で、回答のあった訪問看護事業所194件中、感染の有害事象があったのは77件で、病院非併設型が病院併設型より多い発生であった(p<0.01)。事業所に発生した有害事象で多かったのは「針刺し」29件で、次いで「疥癬」17件、「結核」10件、「新型インフルエンザ」6件、「ノロウイルス」6件等であった。針刺しの原因で多かったのは廃棄に関する内容で、利用者家族による針の保管方法が不適切な状態で回収した、点滴の容器に刺いた針が抜けた、事業所で配給している針の廃棄容器が耐貫性廃棄容器でない等の問題があった。この他リキャップ法の実施や採血前の手袋の未着用も針刺しの原因として挙げられた。管理者194名が針刺し予防としてスタッフに指導している内容で多いのは、「使用直後に耐貫性容器に廃棄」127件、「リキャップ禁止」108件、「スクープ法」58件等であった。B型肝炎ワクチン接種は針刺し後の感染を予防する上で効果的だが、事業所での実施率はインフルエンザワクチンよりも明らかに低く194件中63件のみであった。針刺し以外の感染症による有害事象の原因には、「感染症を知らずに訪問」、「利用者の施設やサービス利用」、「個人防護具の未着用・無効」、「ケア中の曝露」が挙げられ、スタッフに指導している具体的な標準予防策については、「全てのケア終了後の退出時に手洗いをする」(p<0.01)、「血液、体液、排泄恐れがある場合はガウンを着る」(p<0.01)が非有害事象群より高かった。以上、訪問看護での有害事象の原因として標準予防策の実施状況に関しては不適切な針廃棄方法や個人防護具の未着用が関与していた。今後、訪問看護を安全に進めていく上で、使用針の正しい取り扱いや、個人防護具の適切な着用などの標準予防策の必要性が示唆された。
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