本研究は、宮城県における在宅療養支援機関の災害対策の整備状況と取り組みの実態を把握し、現状と課題を明らかにすることで、他機関連携による在宅療養者への防災支援システムの開発につなげるための方向性を検討することを目的としている。 平成22年度は、平成20年度に行った保健・医療・福祉専門職へのインタビューでの課題分析、平成21年度の居宅介護サービス提供機関の管理者、介護支援専門員を対象とした質問紙調査の分析結果に基づき、防災支援システムの骨子と在宅療養者の防災支援が関係機関の連携において有機的に機能するための課題を検討した。関係機関の在宅療養者に対する防災支援の役割認識は捉え方が各々であり、専門分野により関心事項に違いがあるという特徴が見出された。今後に向けて、(1)専門職の防災対策に対する意識と役割認識の啓発、(2)連携を促進するための共通認識を図るツールの活用、(3)各職種の専門性を生かした役割分担に基づく支援の展開の3点が必要ではないかと考察された。 そのため、在宅療養者の防災支援システムは、「各専門職の視点からの情報把握」→「情報の刷り合わせによる支援ニーズの明確化と役割分担」→「日常の援助に取り入れた防災支援の実施」→「支援効果の評価」のサイクルに基づき展開することを考案した。また、システムを循環させるための基盤づくりとして、「専門職の防災支援への関心と意識の向上」、「日常的な活動として定着させるための既存のケアマネジメントシステムの活用」が挙げられた。平成22年度は、専門職の啓発を目的とした公開講座を開催し、在宅療養者の防災支援における連携についての意見の収集と整理・分析を行った。 今後は、次の研究段階として、システムの実用に向けた取り組みの準備中である。
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