認知症ケアに携わる看護・介護職員25名への半構造的インタビューにより、職員が意識して活用している非言語的コミュニケーションを内容分析により明らかにした。 分析の結果、認知症高齢者の行動を引き出すためにとるミラー行動には、相手の行動を引き出す一方で、怒りなど感情を触発する場合があり、ミラー行動の効果的側面と非効果的側面が明らかになった。さらに、職員への言語を伴わない「つねる」などの拒否や攻撃行動に対する非言語的コミュニケーション技能として、「相手の腕を下から支えてゆっくり上下に振る」ことが感情の安定をもたらすことが明らかになった。また、失認のある認知症高齢者の関心を集中させるためには、食器やマットに鮮明な色を活用があり、例えば赤い器に炊いた白い米を入れ、食物や食事への関心を引くことなど意識して行われていた。「相手の視野に入る」ことが言語的コミュニケーションを開始する際には不可欠であるが、「相手の行動を脅かさない距離を保つ」ことは自発性のある活動性の高い認知症高齢者には効果があることが明らかになった。 最終年度である平成22年は、データ収集を継続し、実践現場での参加観察(非参加型)により無意識に行われている非言語的コミュニケーションを分析し、カテゴリを洗練する予定である。さらに、研究成果である非言語的コミュニケーション技能を意識して職員が活用することによる効果を明らかにするため、職員への技能研修会を開催し、技能を学習して活用した職員からの評価データを得る予定である。
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