平成20年度は、高齢者施設の介護・看護スタッフが効果的な非言語的コミュニケーションとして意図的に行っている技能が「手や机をたたく音の活用による注意喚起」「指によるOKサイン」や「腕の挙上によるジェスチャー」「コントラストの明快な色彩の食器配置による食材への関心喚起」「排泄介助時の先導した共同動作の活用」など音・色彩・空間・動作・接触を多様に活用したものであることが明らかになった。 平成21年度は、介護・看護スタッフを対象としたインタビュー分析から、(1)スタッフは認知症の人への非言語的コミュニケーションの多くを無意識に行っている、(2)スタッフは、非言語的コミュニケーション技能に対して対象によって個別化されるため言語化困難であると認識している、(3)意識化された技能は、スタッフ間に情報として共有化されていることが明らかになった。一方、無意識下の非言語的コミュニケーションには、非効果的な行動も含まれていると推察された。 平成22年度は、介護・看護スタッフと認知症の人との非言語的コミュニケーション場面について2施設における各2週間の参加観察を実施した。観察記録の分析結果は、「相手の眼前で左右に手を振る」「相手の眼前で手をたたき音で関心を引く」「手首を強く把持する」「俳徊している人の真後ろについて歩く」「視線を相手に向けず他の人と会話する」「肩に手を掛けながら背中を押す」など非効果的な非言語的コミュニケーションを明らかにした。以上の結果を統合し、非言語的コミュニケーションに関するガイドラインと自己チェック票を開発し、スタッフ教育に活用するための教材を作成した。
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