本研究の目的は、精神障害者家族会に参加する若年層の統合失調症患者の親にとっての家族会の意味を明らかにするとともに、日本の家族会の将来のあり方を検討することである。 大学の倫理委員会の審査を受けたのちに、一つの家族会の会長及び会員に対して研究目的や方法、倫理的配慮について説明し、了解を得て家族会活動に参参加観察するとともに、インタビューを行っている。 今年度は、一家族会の歴史的な変遷に注目し、総会資料や通信などの家族会資料の分析を行った。その結果、家族会は精神保健福祉施策の遅れから、『行政に働きかける運動体』として出発し、地域資源の不足から家族会自らで小規模作業所を開設するなど、『地域福祉資源の創出』に全力を注がねばならなかった。この時代、家族会は会員の凝集性を高めて活性化したものの、その後に残ったのは施設運営の重荷であり、地域家族会の歴史は、負債を抱えて解散した全家連の歴史と類似していると考えられた。家族会は現在、『主体的な家族支援』活動を目指し、家族自身のセルフヘルプグループに立ち返ろうとしている。看護者などの保健医療福祉の専門家が家族会とパートナーシップをとりながら支援し、家族会がセルフヘルプグループとして活性化していくことこそが、今後も精神保健福祉を推進する大きな力になると考えられた。この成果は現在学会誌に投稿中である。 また、家族会としての新たな取り組みである、未加入の家族を対象とする家族教育(家族学習会)に関して、活動内容や活動を通しての家族の変化を学会で発表し、論文とした。
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