本研究の目的は、精神障害者家族会に参加する若年層の統合失調症患者の親にとっての家族会の意味を明らかにするとともに、日本の家族会の将来のあり方を検討することである。 一つの家族会の了解を得て家族会活動に参加観察するとともに、17家族17名にインタビューを行い、データを分析した。分析の結果、『精神障害者家族としての人生に意味を見いだす場としての家族会』というテーマが抽出された。このテーマには、【家族会への参加を通して変化する親子関係】、【家族会への参加を通して広がる家族会の目的】の2つのドメインが含まれていた。【家族会への参加を通して変化する親子関係】では、《心的外傷体験》から始まり、《子どもと一体化》、《比較による一喜一優》、《比較とは異なる新たな価値の発見》を経て、《親子の分離》に至るという5段階が見出された。【家族会への参加を通して広がる家族会の目的】には、《子どものための家族会》から始まり、《家族自身のための家族会》、《社会のための家族会》を経て、《精神障害者家族としての実存的意味を見いだす》に至るという4段階が見出された。家族会入会当初は、子どもの回復のためであった家族会が、自分にとって必要だという認識に変化し、誰もが住みやすい社会を作りたいと考えるようになっていた。精神障害者の子どもを持った家族としての自分の使命を見いだしていた。 若年層の家族の精神障害者家族会入会までの家族の心理的変化、さらに家族会で得たものについて、学会で発表した。今後、学会誌に投稿する予定である。さらに、この研究に際して使用した、エスノグラフィーに関する研究手法の「参加観察法入門」の翻訳を共訳で出版した。
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