研究課題/領域番号 |
20592672
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
服部 紀子 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (10320847)
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研究分担者 |
長田 久雄 桜美林大学, 国際学研究科, 教授 (60150877)
中澤 明美 共立女子短期大学, 看護学科, 講師 (60413118)
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キーワード | 後期高齢者 / 心理社会的発達 / 自我同一性 / 自我の統合 / 縦断研究 |
研究概要 |
研究1【目的】とくに男性にとって職業は人生全般を通して自我同一性を規する重要で要因と言われている。4年間の縦断調査を通して、今後増加が推計されている後期高齢期における自我同一性とその関連要因を発達課題達成感覚から検討することを目的とした。【方法】分析対象は2005年に某大学同窓会名簿から抽出した後期高齢期にある男性に実施した初回調査に協力が得られた739人のうち、4年後の2009年の追跡調査で回答し、欠損値のある者を除いた199人(2005年78.6歳SD3.9歳/2009年:平均年齢82.9歳SD3.9歳)である。調査内容として、自我同一性はエリクソン心理社会的段階目録検査(以下EPSIと略)にて測定し、発達課題達成感覚はNewman(1984)の発達課題に基づき成人期6項目、老年期8項目自作し用いた。得られた回答は得点化し、高得点ほど達成感覚が高い。他に主観的健康感、有償労働の有無、同居家族の有無、経済的満足の有無等について質問した。分析にあたっては、2005年及び2009年調査結果について個人を対応させ符号化により匿名化し用いるこについて、文書で説明し同意書への署名をもって同意を得た。【結果】調査協力者の4年間における主観的健康感、同居家族・有償労働・経済的満足の有無についてχ2検定を行った結果、有意な相違は認められなかった。約8割が健康であると感じ、9割が家族と同居し、2割強が有償労働に携わっていた。年代別にEPSI総得点を従属変数とし、発達課題得点と、主観的健康感、有償労働、経済的満足、同居家族の有無は「1,0」に変換し独立変数としてステップワイズ法による重回帰分析を行った。2005年、2009年の両年度において共通してEPSI総得点に有意な影響を与えていた課題は「生活のなかで新しい役割を持っている」「自分の人生に誇りをもっている」であった。2009年においては、「満足できる仕事に就くことができた」、「自分が没頭できる活動をもっている」、「これまでの人生を受け入れている」といった感覚が影響要因であった。【考察】後期高齢期にある男性の自我同一性感覚に影響を及ぼす要因は4年間で変化していた。新しい役割をもつだけでなく、仕事に代わる「自分が没頭できる活動をもっている」感覚が影響していたことは、本研究の協力者が比較的良好な健康感をもっていたためと推察される。「満足な仕事に就くことができた」感覚は、年を重ねることで、改めて重要な意味をもち自我同一性獲得に影響すると考えられる。研究2【目的】エリクソンの発達理論第8段階の老年期発達課題である自我の統合の様相と要因、支援について検討することを目的とする。【方法】研究1における質問紙調査結果から自我同一性の全体的な感覚が高い群および低い群を抽出し、各群からインタビュー調査協力が得られた10人ずつ計20人にインタビューを行う。インタビュー内容は、自我の統合を示す内容をもとに作成した。「自分の人生を振り返って、かけがえのない人生だと思いますか」「別の人生があったのではないかと思いますか」「死について考えますか」等とした、それぞれの理由と今後更に人生を豊かにするための支援についてとした。分析はM-GTA法の手順に従って質的に分析する。【結果】対象はEPSI総得点が高得点群10人、低得点群9人で約90分インタビュー調査を実施した。現在、逐語記録もとに分析中である。
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