研究概要 |
【研究目的】エリクソンの発達理論における第8段階である老年期の発達課題「自我の統合」の様相を明らかにし、その要因、支援について検討する。【方法】2005年に某大学同窓会名簿から抽出した後期高齢期にある男性に実施した自我同一性とその関連因子に関する初回質問紙調査に協力が得られた739人のうち4年後の2009年の追跡調査を行った。また、その際に個別インタビューの依頼を行い、同意が得られ、かっ面接調査を実施する研究者が所属するキャンパスに移動が可能な高齢者2008年度は19人、2009年度は18人、計37人に面談法にて調査を実施した。インタビュー内容は、エリクソンの心理社会的段階目録検査(中西ら、以下EPSIとする)の質問項目から自我の統合を示す内容を元に作成した。「自分の人生を振り返って,かけがえのない人生だと思いますか」「別の人生があったのではないかと思いますか」「死について考えますか」「歳を重ねることによって得たもの失ったものは何ですか」等とし、それぞれの考えの理由と今後さらに人生を豊かにするための支援についてとした。インタビュー内容は逐語記録とし分析は質的帰納的に分析する。質問紙調査は統計的に分析する。【結果1】年齢を重ねての「獲得」と「喪失」の感覚は老年期の発達課題に影響を及ぼすものと考え、その内容を分析した。「獲得」したものは、多様性に富み豊かであったが、「喪失」したものは獲得に比べ少なく類似したものであった。喪失に上まわる獲得の内容は老年期の発達や精神成熟を検討するための重要な資料と言える。【結果2】後期高齢男性の心理社会的発達と健康度自己評価との関連を分析した。健康度自己評価別にEPSI得点の平均値の差を検討した。2005年では有意な差は認められなかったが、2009年では非常に健康だと思う群と、まあ健康な方だと思う群、あまり健康ではない群との間にEPSI得点に有意な差が認められた。後期高齢期においては加齢の進行に伴い,健康度自己評価の高さが心理社会的発達に影響を与えることが推察された。 現在,心理社会的発達と人生に対する考え、死に対する考えとの関連をM-GTA法の手順に沿って分析
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