研究概要 |
介護保険制度が開始されて10年が経過し、介護保険施設は急増したが、全国の介護保険施設における看護職員の確保状況をみると、約3~4割の施設で採用予定数を下回っており(日本看護協会,2004)、看護・介護職員のマンパワー不足は慢性的かつ深刻な問題である。マンパワー不足には、さまざまな要因による離職率の高さが指摘されている。その心理的要因として、上司や多職種間の人間関係から来るストレス、認知症高齢者などからの暴言、重度要介護高齢者に対する看護ケアの困難さなどから来るストレスが指摘されている(百瀬,2007 ; Cohen & Noelker, 2000)。さらに介護方針の違いや職場環境、相談する人や場所がないなどがストレスを増強させていることが報告されており、職員への教育とストレスマネジメントの方策に関する研究の必要性が指摘されている(畦地良平,2006)。 その対応策と職場満足度を高める方法として、臨床能力を高めるトレーニングや職場環境・支援体制の整備、看護師のエンパワーメントを促進させるプログラム、ストレス低減のための教育を推奨している(Laschinger et al, 2001 ; Bernice, 2005)。しかし、具体的なプログラムの開発や実施・評価は行なわれていない。 本研究の目的は、介護保険施設における看護師がより効果的にストレスマネジメントを実践できるようになるための教育プログラムを開発することである。この研究目的を達成するために、1)介護保険施設に勤務する看護師のストレッサー、ストレス反応、およびストレスマネジメントの実態を把握するための調査を行い、2)その調査結果に基づき「介護保険施設における看護師のストレスマネジメント尺度」を作成するとともに看護師が効果的にストレスマネジメントを実践するための知識・能力を習得できる教育プログラムを開発する。3)介護保険施設の看護師を対象に教育プログラムを試行し、教育方法・内容、および開発したストレスマネジメント尺度、既存のストレス測定尺度を用いて教育成果を評価する。
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