昨年度は、認知症の通所介護を行っているスタッフにインタビューを行ない、スタッフの視点における認知症ケアの現状と課題を検討した。今年度はこの分析結果を洗練し、1.本人へのケア、2.家族へのケアの実際、3.介護のジレンマという視点から分析を深めた。スタッフは、利用者に寄り添いながら自宅での生活を考慮してADLの維持・向上へ向けたケアに取り組んでいるが、利用者の立場に立ったケアができていないなどのジレンマを抱えていた。 今年度は更に、在宅認知症高齢者とその家族の現状とニードを把握するため、在宅認知症高齢者を介護している家族13名(同居家族9名、別居家族4名)ヘインタビューを実施した。対象者には書面及び口頭で研究の目的、方法などを説明し、署名により研究参加の同意を得た。インタビューでは、介護の現状、介護に関する思い、困難に感じていること、専門職へ期待することなどについて自由に語ってもらった。これらを逐語録に起こし、現在質的帰納的にデータの分析を行っているところである。現時点での分析結果から、介護者は手段的・情緒的サポートと共に、介護者間のネットワーク構築を希望していることが明らかになっている。また、ケアマネージャーの姿勢や介護者との関係性が介護の困難さや継続可能性に大きな影響を与えていることが示唆されている。今後は分析を深めて結果を洗練するとともに、スタッフへのインタビューと統合して支援モデルを検討していく予定である。
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