国内の高齢者施設入所中の認知症高齢者の足の実態およびフットケアの課題を把握するため、高齢者施設入所中の認知症高齢者(終日臥床の者を除く)を対象に以下の調査を行い、認知症高齢者の足を的確にアセスメントできる指標作成の基礎データを収集した。1日のほとんどを車椅子ですごしている認知症高齢者89名とその主介護者に協力を依頼し、書面で承諾が得られた70名を調査対象として実施した。個別に作成したフットケアカルテを用い、対象者の足の状態(足全体の観察、爪や足趾の変形・異常の有無、浮腫、白癬の有無等)、履物、靴下の状態を調査した。さらに、フットケアの課題抽出目的にて、日常、靴を履いたまま、車椅子で1日を過ごしている状態における靴内の足趾間湿度を施設で提供されているケアの状況別に測定した。以上の結果、対象者の約75%に足・爪の変形、約90%に足趾の浮きがあり、立位時に姿勢バランスが保持し難い足であることが明らかになり、足趾周辺の発赤や陥入爪、浮腫の発生状況から、靴の着用方法を含めたフットケアの必要性が示唆された。さらに、靴内の足趾間湿度測定の結果、足趾間をよく拭いて乾燥させるなどのフットケアを行っても、その後、靴下や靴を着用すれば、足趾間湿度はフットケアを実施していない状況と同様となり、自らの意志で靴の着脱や苦痛の表出が困難な認知症高齢者へのフットケアとしては不十分であることも明らかになり、認知症高齢者に焦点をあてたフットケアプログラムを構築する必要性が示唆された。以上の結果は、平成22年度開催の看護系学会にて公表予定である。
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