これまでの調査により、ケア方法が対象の状況に合っていない、関心はあっても、ケアの必要性の認識が低いことが明らかになっているため、フットケアに関心がある特別養護老人ホーム6施設の看護師と介護士を対象に、職種別のグループインタビューを行い、認知症をもつ高齢者へのフットケアの現状と課題の抽出を行った。その結果、看護師と介護士では、ほとんど同じ内容が抽出されたが、介護士は、日々の生活援助の中で、高齢者の変化(足のトラブル)を早期に発見できており、看護師は、介護士の情報からケアにつなげている現状が明らかになった。特に、介護士は、起床・就寝時には必ず足をみて異変に気づいているにもかかわらず、その視点の重要性に気づいていなかった。介護士、看護師ともに、ケア方法に関する知識不足と評価方法の整備不足、実践時間の確保がフットケア実践を阻害していることもあきらかになった。無理なく観察できる時間帯と報告できる機会を各施設で設定し、ケアの根拠が説明できるリーダーを育成し、ケア実践の効果がケアスタッフに伝える工夫がフットケアの継続に有効であることが示唆された。次に、認知症高齢者の足のトラブルに関しては左右差は認めなかったが、施設入所中の認知症がある高齢者と認知症がない高齢者との比較において、認知症がある高齢者に有意に転倒が多かった。そのため、認知症がある高齢者と認知症がない高齢者において、両足の足趾間把持力を測定したところ、認知症がある高齢者では、左右差を認め、特に、バランスをとる側である利き足側(利き手側の足)の足趾間把持力が有意に弱いことが明らかになり利き足が上手く使われていないことが推察できた。 今後のケアプログラムにおいては、利き足側の足趾間把持力を強化できる内容を取り入れ、バランスがとれる足づくりを行うことで転倒を予防し、スタッフがフットケア実践の効果を実感できるようにすることも効果的なケアの継続には重要である。
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