研究対象地域(以下、本地域)における在宅重症心身障害児・家族の支援システム開発には、本地域の在宅重症心身障害児・家族を取り巻く保健・医療・福祉の現状をとらえる必要がある。20年度は支援者である訪問看護師、保健師、主治医とのフォーカスグループ会議を通して、専門職から見る在宅重症心身障害児・家族の支援上の課題を導き出した。 その結果、母親の障害受容過程は、保健師や訪問看護師らの介入のそれぞれの時点における支援内容の是非が、母親の受容過程に大きな影響をもたらすことがわかった。 また、保健師・訪問看護師・主治医・ヘルパーが、母親の意向に従い、それぞれの役割を精一杯はたしていたが、職種間の有機的な連携がとれず、活動の重複や職種間での猜疑心、それがもとでの母親との亀裂をも起こしかねない状況をとらえることができた。また、そのケアマネジメントは、重症心身障害児であることから、小児科、母子関係、成長発達段階を考慮しなければならず、専門性が問われ、それぞれのケアワーカーは慣れぬ対応に精一杯の状況をとらえた。 一方、本地域における在宅重症心身障害児・母親の支援は、支援を総括するケアマネジャーが居ず、それぞれの職種がそれぞれの思いで支援し、母親が統合マネジメントを行っていた。その結果、母親は多くの職種やサービス機関と摩擦を繰り返し、母親に多大な精神的・物理的負担を強いている現状をとらえた。 以上の現状から、21年度は、母親の本地区在宅重症心身障害児・家族の全戸調査を実施した。保護者は一緒に歩めるケアワーカーを欲していた。その結果をもとに訪問看護師、保健師、主治医とのフォーカスグループ会議を開催し、それぞれが母親支援について共通理解を持つことができた。某町は、保健師を障害児に係る窓口とし、窓口を一本化した。その窓口を医療機関に紹介し、医療機関からのスムーズな情報提供や連携体制が整った。
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