研究概要 |
アルツハイマー病、脳血管性認知症を問わず、認知症への対応は国家プロジェクトとも言える重大問題である。厚労省の統計によれば女性は90才、男性は100才で平均すると100%認知症に至ることが示唆されている。(Sasaki H etal.Intern Med 42:932-940,2003)。実際、100才老人の80%は認知症であると報告されている。医療から認知症への取り組みが勢力的に行なわれているが、現在脳内アセチルコリン分解酵素を阻害するドネペジリル(アリセプト)のみが用いられているが、認知症測定方法のMinimental State Examination(MMSE)30点満点の1点位しか改善せず、ほとんど効果がないといっても過言ではない。一般に、加齢と共に流動性知能(記憶)は低下し、物忘れ症状につながるが、結晶性知能(総合判断力、感性)は低下しないと指摘されている。本研究はいかにすれば患者さんが喜び、反応するのかを試行錯誤し、何かに感動することが最も反応がよいことに気づいた。認知症患者に1週間に1回、1回1~1.5時間、感動を呼び起こすような感動療法を、退職した高校教師が行った。戦争体験、小説、新聞などあらゆるメディアを用いて話題提供した。また、患者からの反応を確かめ、教師から一方的にならないよう、テーマ性を重んじて行った。それまで無反応な患者でもだれかの話につられて真理をつく反応を示したりした。劇場型の感動を覚える工夫を行った。患者は当時を思い出し、自分に重ね、また、他の患者に同調し、涙を流して感動していた。結果、認知機能(MMSE)は有意な上昇をみた。
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