【研究の目的】本研究は、今後必要な家族看護技術の開発を目標に、今だ明らかになっていない精神障害者への訪問看護における家族看護の実態を、インタビュー調査を通して把握した。 【方法】(1)「精神疾患をもつ利用者の家族看護における困難点」と「その対処方法」、「現行の訪問看護制度や診療報酬体系の問題点」などを、網羅できるように、精神障害者に訪問看護を提供している看護師4人とその看護師らと連携をとった保健師1人、精神科ソーシャルワーカー2人、合計7人にインタビューした。 (2)欧米の地域精神看護における家族看護に関する文献を検討し、法的制度の違いなどを踏まえて困難点や対処方法をレビューした。あわせて地域精神看護において多職種連携で精神障害者を支援しているロンドン(イギリス)で、法的制度の違いなどを踏まえて、家族看護の実態や同病者の家族へのケアなどを地域精神科看護師へのインタビューにて把握した。 【結果】我が国の精神障害者に対する訪問看護における家族看護の困難として、(1)家族が同病、あるいは適切な世話を行えていない、(2)家族関係が密着しすぎる、あるいは関与しすぎない、(3)世話をしている家族の高齢化、などがあげられた。またこれらの困難は重複して起こっているために、訪問看護のみでは対応できず、保健師や地域の社会資源との連携が必要であった。しかし、社会資源活用は、訪問看護師がケースマネジメントをすべて行っていたり、逆にケースマネジメントの役割者が存在するが、他職種へ訪問看護師が直接連絡をとることを拒んだりと、まちまちであった。困難事例に対しては、訪問看護のみでは支援は不可能なので、ロンドンで行われていた医師・精神科看護師・作業療法士・ソーシャルワーカー・ヘルパーなどの多職種チームによる支援体制が必要だと考えられた。次年度は今回明らかになった困難点の実態調査を全国規模で行う予定である。
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