【目的】 家族支援技術の開発を目標に、訪問看護ステーションにおける精神疾患をもつ利用者への訪問看護の家族支援の実態を把握する。特に、家族の介護負担のみならず、家族成員の生活困難を発見した場合の訪問看護の提供内容や方法、その困難点、対処、その時の他職種連携の状況に注目する。 【対象】 全国の指定自立支援医療機関(精神通院医療)の届け出をしている訪問看護ステーション2288件のうち、無作為抽出した300件に所属する管理者と、認知症を除く精神疾患をもつ利用者に訪問看護を提供した経験のある看護師を対象とした。2288件の母集団の標本として、最低でも93件の回収(回収率31%以上)を予定した。 【方法】 無記名式質問紙調査法を実施した。質問紙の内容は、(1)訪問看護ステーションの属性と、(2)精神疾患をもつ利用者の家族支援の経験をたずねた。(2)は、平成20年度、訪問看護師・保健師・精神保健福祉士に、精神疾患をもつ利用者への訪問看護場面における家族に関する困難事例のインタビュー結果と、文献検討をもとに作成した。(1)は訪問看護ステーション管理者に、(2)は精神疾患をもつ利用者と家族への訪問看護を経験している看護師3人に回答を求めた。 【結果】 94件の訪問看護ステーションから回答があり、精神障害をもつ利用者に対する看護を提供しているのはそのうち82件であった。家族支援における困難事例を経験していた看護師は全看護師160人のうち60人(37.5%)であった。困難の経験有と関連していた看護師の背景は、精神科訪問看護指示書の利用者への延訪問回数/月と精神障害者への訪問看護経験年数が多いことであった。また困難の経験有と関連していた家族要因は、利用者への支援体制の不十分さ、サービスに関する手続き上の問題、利用者への不適切な認識、家族支援の比重、精神状態の不安定、安全性の確保されない介護方怯、利用者の権利の侵害、社会資源の受入れの消極性の多さであった。
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