本研究は、追跡調査の成績を基にして在宅環境における神経筋疾患患者とその家族への緩和マネジメントのモデルを開発する。初回調査を疫学的観点から実施して、これをベースラインデータとした。観測データは、患者側が、症状14項目・障害度(Katz身体的ADLの筆者修正版)・健康関連QOL(SF-8日本語版)、うつ傾向(CES-D10日本語版)、および筆者らが開発した在宅生活のアウトカム指標(5指標15項目)、睡眠の質【ピッツバーグ睡眠票日本語版】であり、家族側が負担度(アウトカム指標の一部)の状況である。平成21年度は、ベースライン調査の内容を継続し、在宅における神経筋疾患患者と家族介護者の継時的データを収集した。倫理的配慮として、倫理委員会審査承認後に同意を得るための予備調査を実施した。同意を得られた対象者数は、233名(平均年齢61.1歳)(女性:101名、男性:132名)であった。調査方法は、二重連結可能匿名化として、連続番号のみによる無記名の郵送留置調査法を採用した。神経筋疾患の緩和マネジメントと特に関連が深い有症状の割合は、発熱:10.2%、疲労感:71.1%、目眩:32.0%、関節筋慢性痛:47.1%、痺れ:52.0%、震え:29.3%、浮腫み:29.3%、無気力感:43.6%。不眠:29.3%、視覚:48.0%、聴覚:26.8%、易転倒:42.7%、息切れ:30.2%、筋脱力感:49.3%、および麻痺:35.6%であった。また、症状のうち、特に睡眠の質に影響を及ぼしているのは、痺痛、痺れ、および震えや痙攣であり、同様に、症状の有無は健康関連QOLに対しても障害度より大きな影響を与えていた。来年度以降もこれらの症状や生活の質の変動を継時的に追跡し、必要な緩和ケア方略の開発につなげる。
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