研究課題
特別研究促進費
本研究では、歯科治療時に破棄されるヒト第三大臼歯歯胚由来細胞を用いた歯根部の再構築技術の開発が課題となる。はじめに、ヒト第三大臼歯歯胚と同じ発生段階のマウス歯胚から、歯根部組織の再構築技術に適応した細胞の探索に取り組んだ。矯正治療中に便宜抜去されるヒト第三大臼歯歯胚は鐘状期後期であるため、同じ発生段階のE18マウスの歯胚から採取した細胞を培養した。摘出したE18マウスの歯胚組織はディスパーゼで処理して歯乳頭と歯小嚢に分離し、コラゲナーゼを用いて単一化細胞を採取した。歯乳頭細胞と歯小嚢細胞は、それぞれ7歯胚から採取した細胞を10cm dishに播種し10%FCS含有DMEM培地で培養すると、約1週間でコンフルエントの状態に増殖することが明らかとなった。また、デキサメサゾンを用いて培養すると、いずれも石灰化が誘導されることが明らかとなった。このことから、E18マウスの歯胚から採取した歯乳頭細胞と歯小嚢細胞は、増殖能と分化能を有して、歯根の再構築技術に適した細胞であることが示唆された。つぎに、歯根部を再構築する技術開発を進めるために、ヒトの歯根吸収および歯根端切除術術後の症例を想定したマウスの動物モデルを作成した。はじめに、4週齢のマウスの上顎第一臼歯を抜歯し、歯科用エンジンを用いて近心根を根尖部より歯根端を削除する。その後、抜歯窩に再植して歯科用レジンで固定した。約4週間後、組織学的に解析すると、削除した歯根端部に新生骨が充満する歯槽骨の自然治癒が認められ、ヒトの歯根吸収および歯根端切除術後の症例を模倣したマウスの動物モデルであると考えられた。今回の結果は、歯根部の再構築技術の開発にむけた細胞源の探索と動物モデルの作成であり、本研究をすすめるための重要な研究基盤となる。今後は、削除した歯根尖部に歯乳頭細胞と歯小嚢細胞を再構築して移植することにより歯根尖の再生を目指す予定である。
基盤C
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
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