本年度は、マウスインフルエンザ(PR8株)ウイルス感染モデル肺で遺伝子発現解析を行なった。Bioinformaticsの手法を用いたpathway解析から感染に伴い、イノシトールリン脂質代謝系、とくにClass III PI3-kinaseを中心としたパスウェイが大きく変動することがわかった。また、代謝経路関連遺伝子の動態を解析し、感染に伴って大きく変動するkinaseならびにphosphataseを同定した。次いで、樹立したイノシトールリン脂質(PIs)関連酵素欠損マウスを用いてインフルエンザ(PR8株)ウイルスの感染実験ならびにin vivoマウスICUシステムによる解析を行った。合わせて、ウイルス価、ウイルスRNAの増幅、肺病理所見、サイトカインプロフィール、オートファジー関連遺伝子の発現変化等を経時的に解析した。さらにdot plot法で肺組織PIsの変化を見た。これらの検討から、PIKfyveをはじめとした、エンドゾームに存在するイノシトールリン脂質が、インフルエンザウイルスによる重症呼吸不全の発症に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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