研究課題
特別研究促進費
グルオーマは浸潤性が高く、予後の悪い癌の一つである。リゾボスファチジン酸(LPA)はグリオーマ細胞の浸潤に対する強力な促進因子であることから、このLPA受容体シグナルを抑制することがグリオーマの浸潤に有効であると期待される。そこで、本研究ではLPA受容体を介した遊走応答を著明に抑制するスフィンゴシン1-リン酸(S1P)/S1P2受容体系、β-アドレナン受容体/cAMP系などLPA受容体に対する抑制シグナルの詳細を解析し、癌治療の新しい標的分子としての可能性について解析した。その結果、(1)S1P2受容体を介したLPA作用の抑制作用に関して、Gi(百日咳毒素)、Gq(YM-254890)、G_<12/13>(p115PhoGEFのRGSドメイン(p115RGS))に対する特異的なツール、また、低分子G蛋白の変異遺伝子(T19-rhoA、T17-rac1, Rap-GAP)の発現実験などによって介在するG蛋白質を解析した結果、S1P2受容体はG_<12/13>/RhoAを介していると推定された。(2)最近、Rhoを介したシグナルにはtumor suppressor phosphatase and tens in homobg deleted on chromosome 10(PTEN)の関与が報告されているが、グリオーマでは不明である。そこで、PTEN欠損のグリオーマ(U87、1321N1 astrocytoma cellsなど)とPTENを発現するグリオーマ(GNS-3314、CGNH-89、rat C6 glioma cellsなど)でのS1P作用を比較した結果、S1Pによる抑制応答の抑制はPTEN欠損のグリオーマ、PTENに対するsiRNAを用いたノックダウン細胞でも観察されPTENは介在していないと結論された。(3)LPA1受容体を介した細胞運動(遊走、浸潤)に対してβ-アドレナリン/cAMPは抑制応答を発揮する。この抑制作用はcAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)阻害薬では無効であるが、EpaG阻害薬、siRap1で解除された、Epac/Rap1系の関与が考えられた。(4)このβ-アドレナリン/cAMPの抑制応答はSIP2受容体とは異なりPTEN欠損のグリオーマでは観察されず、PTENの関与が示唆された。このように、SIP2受容体、β-アドレナン受容体は全く異なったG蛋白質、細胞内シグナル伝達系を介してLPAの細胞遊走を抑制していると考えられる。
基盤C
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