大腸腫瘍間質に浸潤するマクロファージ(tumor associated macrophage、以下TAM)の活性化状態を変化させ、大腸腫瘍の進展予防・治療に結びつく知見を得ることを目標とし、当該年度には下記の実験を行った。 1. ApcMin/+ NRDc+/-マウスの作出:ApcMin/+ NRDc+/- compound mutantマウスの作出を行った。同compound mutantマウスの腸ポリープでは、代表的なM1マクロファージのマーカー発現がWTマウスに比べて減弱していた。 2. ApcMin/+マウスへのCox・2阻害剤投与によるマクロファージ活性化に及ぼす影響の検討:ApcMin/+マウスに対しCox-2阻害剤の投与を行うと、腸ポリープ内のM2マクロファージのマーカー発現が減弱していた。 3. NRDc+/-マウスへのazoxymethane/dextran sodium sulfate (AOM/DSS)投与による炎症性発癌の検討:炎症性発癌のメカニズム解明も企図し、NRDc+/-マウスへAOM/DSS投与を行った。その表現系を解析中である。 4. マウス内視鏡を用いたmicro RNAの局所投与に関する条件検討:ApcMin/+マウスの大腸にマウス用内視鏡を挿入し、不活化センダイウイルスを併用してEGFPレポーター・コンストラクトを直視下に大腸ポリープに局所注入した。より効率の高い局注方法を確立するための条件検討を行った。 以上の各実験により、TAMの活性化状態を調節する候補因子を同定した。これらの知見に基づいて、次年度は遺伝子治療への基礎的知見を得ることが期待される。
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