研究概要 |
我々はこれまで、急性膵炎時の膵腺房細胞においてオートファジーが過剰に誘導されることを報告して来た(Ohmuraya, M. et.al.Gastfoenterology 129 : 696-705, 2005. Ohmuraya, M. et.al. Pancreas 33 : 104-6, 2006.)。この研究を発展させ臓器特異的オートファジー欠損マウスを作成し解析した。この結果、膵腺房細胞内でトリプシノーゲンが活性化されるには、オートファジーの機構が必要であるということを示した(Hashimoto, D. et.al. J. Cell Biol. 181 : 1065-1072, 2008)。また、おなじくマウスを用いた急性膵炎実験において、オートファジーは栄養条件に影響されず腺房細胞内に誘導されることが示された(論文作成中)。 このように、我々は膵腺房細胞とオートファジーの関わりを明らかにした。ここで得られた研究結果およびオートファジーの組織学的、生化学的解析についての技術を用いて、膵癌細胞株におけるオートファジーの誘導について解析をおこなった。膵癌細胞株PANC-1に、SN-38、5-FU、CDDPといった抗癌剤を投与して電子顕微鏡で観察すると細胞質に著明な空胞変性つまり過剰なオートファゴゾームを認めオートファジーが誘導されることを確認した。同様にオートファゴゾーム関連蛋白であるLC3に対するウェスタンブロッティングでも、抗癌剤投与時の過剰なオートファジーの誘導が確認された。またオートファジーに必須の遺伝子であるAtg5に対するsiRNAを用いてオートファジーを抑制すると、抗癌剤の殺細胞効果が増強された。つまり、癌細胞がオートファジーを通じて抗癌剤というストレスに適応し細胞内の恒常性を維持しようとしている可能性が示唆された(論文作成中)。
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