本研究では、ふたつのカスパーゼ1制御性NLRタンパク質、NALP3(NLRP3)とIPAF(NLRC4)のリガンドを探索・同定するために、ふたつの方法を計画している。いずれの計画においても、平成20年度は、21年度以降に計画している標的分子の分離のための準備作業を行った。「計画1.NALP3およびIPAFに結合するタンパク質の探索」のために、マウス由来マクロファージ様細胞RAW264.7細胞に遺伝子を導入するための条件を検討し、(1)RAW264.7細胞がカスパーゼ1活性化に必要な補助タンパク質ASCを発現していないこと、(2)しかし人為的にASC遺伝子を導入することでNALP3およびIPAFによるカスパーゼ1活性化能を付与できること、(3)遺伝子の導入にはプラスミドのトランスフェクションの他、レトロウイルスベクターによる遺伝子導入も可能なことを発見、確認した。現在、プロテインAタグを付加したNALP3およびIPAFタンパク質が哺乳動物細胞内で機能するかどうかを確認しており、これらを確認できれば、この細胞株からのNALP3/IPAF複合体の抽出を試みることができる。「計画2.無細胞系によるNALP3およびIPAF経路の再構成」のために、NALP3、IPAF、カスパーゼ1およびASCの組換えタンパク質の大腸菌による合成を試みたが、これらのタンパク質の可溶化は困難であった。そこで、哺乳動物細胞株を用いたタンパク質発現系に切り換え、これらのタンパク質を恒常的に発現するヒト胎児腎細胞293細胞株を樹立した。今後、これらの細胞から目的タンパク質を抽出し、それらを混合することによってシグナル伝達系を再構成することを目指す。
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