本研究は、「高大連携」の期待と現実のズレに注目し、日本における高大連携の実態を把握し、「高大連携」を促進する要因と阻害する要因を明らかにすることを目的としている。今年度は、大規模研究重点大学で実施された高大連携活動に注目し、活動を単位として、内容、実施主体、高校との関係などの特性を用いて記述的な研究を行った。過去3年間に実施された250件の高大連携活動は、大学の企画によるものと外部依頼によるものに二分され、大学による企画では教員派遣が8割を占め、その大部分が理系学部による高校訪問と講演であった。高校と大学との関係については、それぞれの活動(高校の進路学習、大学の入試広報)に対する協力の要請が中心で、「協働」と認められる活動事例は5件であった。また、高大連携を推進するための組織を持つ学部以外は、教員どうしの「知り合い」関係に依存せざるを得ない実態が明らかになった。日本における高大連携は、中教審答申や外部資金(例:SPP)など外からの誘因が強く働いており、シロトニックとグッドラッド(1988)が重視した「双方に内在する問題意識から出発した取り組み」を見いだすことはできなかった。
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