大学における自校教育の導入実施状況を把握するため、平成20年8月に全国の国公私立すべての752大学に調査アンケートを依頼し、373大学より回答を得た(回収率49.6%)。このうち、136大学が自校教育授業を「実施している」と回答した(全国大学総数の18%)。また、33大学は「検討中」と回答した。回答からは196授業を確認した。ただし、授業計画全体を自学に関わるテーマと内容で構成する「フルバック」型授業は、回答授業中の30%である。 履修対象者について、回答授業の50%が学士課程1年生に限定している。授業形態は、回答授業の71%が講義形式であり、82%は複数教員体制を採用している。学長、理事長、大学役員、学部長が授業を担当する場合も多く、学外者や卒業生も招聘されている。これらもふまえ、回答授業の78%で授業コーディネーターを配置するが、その職務負担の大きさが授業運営上の課題にもなっている。大学職員や同窓会が授業の企画運営に参画する場合もあった。 実施目的や授業内容については「自学の理念・使命・目的の周知」、「自校史・沿革の理解」が回答上位である。授業目的の設定では「学士力」との関わりもうかがえた。成績評価方法は「出席状況」、「レポート」を重視する授業が多い。実施上の課題として、「担当教員の選定」、「授業内容の整合性」、「授業目的や到達目標の設定」など、複数教員体制に起因する課題や、授業の「質保証」の課題があがった。 自校教育授業について、各大学のとらえ方や位置づけは様々で、実施形態も多様であった。次年度以降の研究課題として、授業評価結果や教育成果の検証も含め、授業改善の視点に立った考察も必要である。 なお、調査結果は協力大学に報告書を送付し、また「大学教育学会誌(平成21年5月刊行予定)」に論文掲載となる。
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