平成22年度研究では、自校教育授業の内容構成について、授業実施大学のシラバスから検証した。「自校理解教育類型」の授業では、「大学の理念・建学の精神」、「自校沿革史」、「自校の現況」、「地域と大学」、「学生論」、「大学に関わる人物」、「大学の将来像」などが授業内容の主な構成要素となっていた。「初年次教育類型」授業では、授業計画の1~3回時に「大学の理念」や「大学沿革」等の「自校教育」を実施する場合が多い。「大学史(自校史)教育」類型授業では、「建学の精神」をふまえた大学(学園)設立の経緯、各前身校の沿革及び新制大学としての発足の経緯、高度経済成長期の大学拡張、学園紛争、キャンパス移転等を積極的に取り扱っていた。これまでの授業実践や授業アンケート結果をふまえ、通史授業ではなく「歴史的テーマ(トピック)」を選んで掘り下げていく取り組みもみられる。 本年度研究では、3認証評価機関による各「大学評価結果」で自校教育に言及している箇所も検証した。いずれの評価機関とも、自校教育の取り組みを「大学の目的周知として有効」あるいは「大学の個性に応じた初年次教育」として積極的に評価し、いくつかの実践は「優れた取組」として別途記載されていた。このことは、自校教育が一定の成果をあげていることの成果指標となり、大学評価にも有効に活用できよう。 近年、各大学では、自学の理念・モットーを「実質化」する教育プログラムや授業を工夫しており、これを「自校教育」と位置づける大学もある。あるいは自学での学習や生活に関わる「健康・安全教育」、「キャリア教育」、「人権教育」、「地域論」などを「独自の自校教育」とする授業もある。こうした授業は「自校教育」の新しい潮流であり、「認証評価」でも積極的に評価していた。 なお、研究結果の一部は河北新報(2010年8月6日)朝刊・教育欄(「自校教育」大学で広がる)に報道された。
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