本研究は、理工系大学・学部に女子学生が少ない要因について、大学の構造に焦点をあてて探るものである。具体的には、1)日本の理工系大学・学部における女子学生比率の実態を明らかにするとともに、2)女子学生比率が高い理工系大学・学部の特徴を見出した。 男女共同参画基計画(第2次)や第3期科学技術基本計画において、2020年までに「指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度」となることを国の目標としていることを踏まえ、理工系学部の女性学生が30%を超える65大学・学部(該当学部の22%に相当)を「高比率群」とし、その大学・学部特性を捉えた。主な知見は以下のとおりである。(なお、女性学生比率が10%未満の大学・学部を「低比率群」として分析を行っているが、煩雑になるためここでは割愛した。) ・高比率群で、女性教員も30%を超えるのは4大学で、すべて女子大学であった。 ・高比率群の理工系学部は、中部ブロックにやや多く分布している。 ・高比率群の理工系学部は、入学試験の受験機会が少なく、入試教科・科目数が多い。 ・高比率群の理工系学部の入試合格難易度は、国公立でも私立でも超難関に次ぐ難関である。 これらを踏まえ、理工系学部の女性学生比率が低い一要因として、理工系学部を選択する女性は「入りやすいところに入る」という進学行動をとらないことがあげられた。男性は、不本意に理工系選択を行っている学生がいることを先に指摘したが、今回はこれを構造的に捉え直すことができた。
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