大学の研究機能に関しては、これまで研究活動の「卓越性」を評価する枠組に基づいて、論文、特許等の多寡や優秀性を評価してきた。しかし、こうした単純な評価枠組が大学改革や政策改善に結びつくとは言いがたい。そこで、イノベーションも取り込んだミクロレベルの評価モデルを開発する。このため、以下のデータ収集、事例調査、検討等を、前年度に引き続き実施した。 1.データ収集と実態分析 前年度に引き続き、研究代表者等が所属する筑波大学を対象として、各種データベース等に公開されているデータを中心に、可能な限り属性分類に沿ったデータ収集を行うとともに、データの特性、限界についても検討した。さらに、学内で集積されているデータ等ののうち、とくに非公開データ(産学連携関係等)に関して、学内のデータ保有部署と協力しつつ、守秘義務に違反せず、かつ分析に供しうる匿名化方式を開発した。 また、これらの評価用指標データ群は、相互に結びつけられていないので、今年度は、ケーススタディを通じて、評価モデルに基づき、個別評価指標(研究資源配分、研究基盤形成と、学術的貢献、人材育成、アクセス機会の提供、技術移転等)の相互関係を個別研究室レベルの活動に即して、ミクロに把握し、相互関係を特定する方法、可能性を検討した。 2.評価方法の開発と検証 上記の成果をデータの収集可能性、データの粒度などを勘案しつつ、前年度検討した初期的な評価モデルの見直しに結びつけた。 なお、マクロレベルでの評価分析は、独立して実施することが可能であるので、並行して実施し、大学改革が研究活動に及ぼした影響を評価するとともに、評価モデルの妥当性を検討した(これについては、成果を個別に抜き出すことも可能なので論文等にまとめた)。
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